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平成19~21(2007~2009)子どもの親・同胞との死別による喪失体験と支援のあり方(本研究はJSPS科研費19592531の助成を受けたものである)

研究成果の概要

小学生の子どもをもつ養育者868名を対象に、子どもの「死」に関する体験、子どもと「死」について話すこと、死別を体験した子どもへの対応に関する内容を調査した。子どもの体験は、ペットとの死別約50%、通夜・葬式の出席、病気のお見舞いの体験は85%以上、死別の体験は42%であり、普段から子どもと「死」について話をすることのあるものは約70%で、ニュースの事件や話題がきっかけとしている。親の80%以上は、子どもと「死」について話すことは大切であると考えていた。しかし、30%の親はほとんど話すことがなかった。
また、死別体験をした子どもをもつ親へのインタビューでは、子どもと死について話す機会を持つことの大切さを感じ、死別体験の有無が子どもの生や命の捉え方に大きく影響していることを実感していた。一方、メディアから入る情報に子どもたちが、影響を受けることへの危惧、親の考えを伝えることの難しさも強く認識していた。今後子どもの死別体験がある場合も含め、子どもと親が、生・死の問題をともに考えていくあり方を検討していく必要性がある。

This study aims to explore how children respond to their experiences of death and other related forms of loss, as well as examining what kinds of communication exist between children and their parents regarding death and loss experiences.  Subjects were 868 parents with children from 1st grade through 6th grade volunteered to participate in the study. Common loss experiences amongst the children were the attending of funerals and visiting sick family members (85%), loss of a pet (50%) and follows death of parents/grandparents (42%). Of those parents, 70% said they had a conversation about death and dying with their children on a daily basis, and many said that social problems and news reports concerning murder and suicide cause them to bring up that conversation. Many parents believe that it is important to have “death-related” conversations from early on in their children’s lives, but more than 30% of parents reported that they never had an opportunity to have such discussions with their children. While the desire of parents to provide death education for their children is quite strong, according to the results only 30% of parents have such opportunities to communicate with their children about death and loss experiences.

研究の背景

欧米においては子どもの死別による悲嘆、喪失体験については、研究が進み子どもの死別体験が、適切な支援を受けないまま放置されることは、子どもに心理的苦痛を引き起こすことになることが指摘されている。そのため、子どもにとって大切な人との死別に際しては、一緒に過ごす、語る機会を持つなど子どもへの支援の取り組みが進んでいる。子どもにとって大切な人との死別は、危機的出来事であり、適切なサポートが必要であることは欧米の研究でも明らかであるが、わが国では、大人と子どもが「生・死」の問題を向き合い考える機会が多いとはいえないのが現状である。村井(1996)は、大人や教師が「死」は知の対象ではなく、「死について考えても仕方がない」と考えているからであること、2つ目に大人や教師の内面にも死に対する恐怖があり、死について語りたがらない、語ろうとしない「死のタブー」が形成されているからであると指摘する。著者ら(2000)の調査では、小学4~6年でペットや身近な人との死別体験は7割前後の者が体験していると答えているが、家族と死について話したことがあるものは4割弱であり、年齢が進むにつれ話したことがあるという経験は減少する傾向にあった。上薗(1996)の調査でも、ペットとの死別体験は7割を超えるが、死に関わる質問をしたことがあると答えているものは1割前後と報告されている。 これらのわが国の子どもと「死」について語ることが一般的とはいえない状況である背景を踏まえ、大切な人との死別を体験した子どもやその家族への支援方略を考えなければならない。大切な人と死別する子どもを取り巻く状況を系統的に明らかにし、検討を加えていく意義は大きい。

引用文献

  • 村井淳:Ⅲいのちの授業をつくる,性の授業 死の授業,金森俊明・村井淳志, 198-199,教育史料出版会,1996.
  • 岡田洋子他:子どもの「アニミズム・死の概念発達」と生活体験―Death Education の方略を求めて―,平成10~12年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書,2001.
  • 上薗恒太郎:子どもの死の意識と経験,長崎大学教育学部教育科学研究報告,51、15-25,1996.

研究の目的

以下の視点から検討を進めた。

(1)子どもをもつ親が、子どもと「生・死」について語ることについての意識、認識を明らかにする。
(2)死別体験のある子どもをもつ親が、子どもの死別体験を通して考えたこと、体験したこと、実際に子どもへの関わりなどを明らかにする。
(3)死別体験のある子どもの悲嘆、喪失体験を明らかにする。
(4)死別体験の子どもとその家族への支援方略について検討する。

研究期間

  1. 小学生をもつ親が子どもと「死」について話すことの意識と実態、2007年11月~2008年3月
  2. 小学生の子どもをもつ親の生・死の問題に対する意識(質的帰納的調査)2008年9月~2009年5月
  3. 死別体験のある子どもの親の生・死の問題に対する意識(質的帰納的調査)2009年1月~6月

研究結果

1. 茎津智子,小林千代,井上由紀子,岩本喜久子,岡田洋子,工藤悦子,小学生をもつ親が子どもと「死」について話すことの意識と実態.天使大学紀要, 9巻,81~92,2009.
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007535560

〔学会発表〕
1.茎津智子,工藤悦子,小林千代,井上由紀子,岡田洋子,小学生の親が子どもと「死を語る」ことに関する意識と実態,第55回小児保健学会,2008,9,札幌.

2.井上由紀子,茎津智子, 小林千代,工藤悦子,岡田洋子,身近な人と死別した子どもをもつ親が子どもと「死を語る」ことに関する意識と実態,第55回小児保健学会,2008,9,札幌.

3.小林千代,茎津智子,工藤悦子,井上由紀子,岩本喜久子,岡田洋子,小学生の子どもをもつ親の生・死の問題に対する意識.第15回日本臨床死生学会大会,2009,12,東京.

4.井上由紀子,岩本喜久子,岡田洋子,小林千代,茎津智子,工藤悦子,死別体験のある子どもの親の生・死の問題に対する意識. 第15回日本臨床死生学会大会,2009,12,東京.


小学生をもつ親が子どもと「死」について話すこと意識と実態
An Exploratory Study of Attitudes towards Death and the Discussion of Death among
Children and Their Parents

茎津 智子  天使大学看護栄養学部看護学科
小林 千代  天使大学看護栄養学部看護学科
井上由紀子 日本赤十字北海道看護大学
岩本喜久子 札幌医科大学
岡田 洋子  旭川医科大学医学部看護科
工藤 悦子   元天使大学看護栄養学部看護学科

Ⅰ.はじめに

近年、我が国でも子どもにとって身近で大切な人との死別などの喪失体験や悲嘆反応に対して関心が向けられるようになり、子どもが身近で大切な人と死別した時に適切な支援を行うことの必要性が語られるようになってきている。小島1)2)3)は、継続的に親と死別した子どもの体験やグリーフケアに関する研究を報告している。伊藤ら4)と大塚および安藤5)は、事例を中心とした報告を行っている。これらの子どもの悲嘆反応や悲嘆プロセスに関するものの多くは欧米での研究が中心である。欧米では、1990年代よりこれらの問題に関して研究が進められてきた。Grollman6)は、親や同胞を亡くした子どもの思いや反応、別の人も亡くすのではないかという恐怖、自らの死への恐怖や自らの気持ちを表現することをしなくなるなどの複雑で多様な反応があることを指摘している。Worden7)およびSilverman8)は、死別体験をもつ子どもの悲嘆、喪失の反応とそこからの回復のためのプロセスと適切なサポートの必要性を述べている。さらにアメリカ、カナダなどでは、1980年代頃より死別体験した子どものグリーフワークに対する支援が民間団体などでも積極的に取り組まれている。 我が国では、大人側に子どもと「死」ついて話すことに抵抗があると言われ、村井9)は、これらの問題を大人や教師が「死」は知の対象ではなく、「死について考えても仕方がない」との考えがあること、2つ目に大人や教師の内面にも死への恐怖があり、死について語りたがらない、語ろうとしない「死のタブー」が形成されているからであると指摘する。これら「生・死」に対する考えや「悲しみ、悲嘆」の反応や表現、「喪」への認識、儀式などは、社会的・文化的価値、伝統的考え、信念などに影響を受けることも考えられる。 特に、我が国では子どもと「死」について話すことが一般的とはいえない状況であるといわれていることを考えたとき、「死」について親や子の意識を含めた研究が系統的に進められる必要がある。 そこで、今回は小学生の子どもを持つ親が、子どもと「死」について話すことに関する実態調査を行い、身近で大切な人と死別する子どもたちへの支援のあり方を考える上での示唆としたい。

Ⅱ.研究目的

小学生の子どもの親が、日常の中で子どもと「死」について話すことをどのように考え、また、関わっているのかについてその実態を明らかにする。

Ⅲ.研究方法

1.調査対象
道内の政令市および地方都市の校長会などを通じて調査の趣旨、内容の説明を行い、協力の得られた10校の公立小学校に調査用質問紙配布の協力を依頼し、各小学校を通じて調査用紙を配布した小学1~6年の子どもをもつ養育者を対象とした。配布数4014名、回収数868名(回収率21.6%)を分析対象とした。但し、子どもに死別の経験があった場合の内容に関しては死別の経験を持つ子どもの親363名を分析対象とした。
対象者は、小学生の子どもを持つ親としたが、実際には親の多くは複数の子どもをもち年長の子どもの中には20代の子どもを持つ場合があったが、現在一人でも小学生の子どもを持っている場合には対象とした。質問紙への回答は、複数の子どもがいる場合には年長の小学生の子どもに関する状況について回答することを求めた。

2.調査期間
2007年12月~2008年2月。

3.調査方法
調査は、無記名自記式質問紙を協力校の小学校経由で養育者に配布した。回収は返信用封筒を同封し郵送による回収を行った。

4.調査内容
調査内容は、回答者の年齢、家族構成、子どもとの続柄等の属性に関すること、子どもの体験している出来事としてペットとの死別、親しい人のお見舞いや通夜・葬式の出席の体験の有無に関することである。また、子どもと死について話すことに関する内容は、普段どのようなときに、どのような話題について話すのか、また子どもにとって大切な人と子どもが死別したときに何を、いつ、どのようなことを話したのかについて質問項目を設定した。最後に自由記述欄を設け、子どもと「死」について話すことについて親として日頃思うこと、考えていることを自由に記載してもらった。

5.用語の定義
子どもにとって大切な人との死別:今回は親が子どもにとって大切な人だったと考えた人との死別とし、死別の相手を親、きょうだいなどとは特定してはいない。

6.分析方法
調査結果は、単純集計により実態を把握した。さらに、続柄と子どもと「死」について話すことの関連をクロス集計で分析した。検定にはΧ検定を行った。データ解析には統計パッケージSPSSver.15を用いた。子どもと「死」について話すことについて思うこと、考えていることに関する自由記述内容の分析は、文脈ごとに意味内容を考え分類しカテゴリー化した。

7.倫理的配慮
調査対象者には、調査の目的及び依頼内容、また調査に協力しない場合でも不利益などを被ることがないこと、結果は個人が特定されない方法で処理されることを記載したものを調査用紙に同封し書面による説明を行った。また、研究結果は学会等で公表することも明示した。調査への同意は、調査票に回答し返送することをもって同意とみなした。
本調査は、天使大学倫理委員会の承認を得て実施した。

Ⅳ.結果

1. 対象者の属性
対象者の属性は、表1に示した。子どもとの続柄では、母親808名(93.1%)、父親54名(6.2%)、その他(祖父母、叔母など)5名(0.6%)であった。年代では、30歳代341名(39.3%)、40歳代367名(42.3%)と30代、40代で8割を占めていた。平均年齢39.8±5.4歳であった。 家族構成は、両親と子どもの世帯620名(71.4%)、母親と子どもの世帯95名(10.9%)、父親と子どもの世帯3名(0.3%)、両親、子ども、祖父母との同居世帯87名(10.0%)であった。子どもの数では、2名が452名(52.1%)と最も多く、1名が201名(23.2%)、3名が185名(21.3%)、4名以上27名(3.1%)であった。
本研究では、小学生の子どもを持つ親を対象としているが、対象の子ども全員の年齢の記載を求めたため対象者の子どもの年齢は最年長26歳~最年少0歳であった。子どもの平均年齢は10.0±4.0歳であった。
対象者には、続柄では親以外の養育者も数名含まれるが、結果を述べていくにあたっては本文では父親・母親以外が含まれている場合も「親」として述べることとする。

表1 対象者の属性



2.子どもの「死」に関連する出来事の体験

子どもの「死」に関連する体験は、表2および3に示した。ペットとの死別は、ほぼ半数が体験していた。子どもの通夜や葬式の出席、子どもにとっての大切な人の病気や入院、お見舞いの経験はいずれも85%前後が体験していた。子どもにとって大切な人との死別の体験は363名(41.8%)であった。死別相手は祖父母が254名(70.0%)と最も多く、身近な家族では、父親、母親、きょうだいとの死別は19名(5.3%)であった。友達との死別は25名(6.9%)であった。その他では曾祖父母、叔父、叔母、いとこ、親類、知人、学校の先生などとの死別であった。死別相手の死因は「病気によるもの」322名(88.7%)が最も多く、「事故・災害」35名(9.6%)、「自殺(自死)」10名(2.8%)「犯罪等の被害」1名(0.3%)によるものであった。

表2 子どもの「死」に関連する体験

表3 子どもの死別体験の相手および死因


3.子どもと「死」について話すことの有無とその機会

普段の生活の中で「死」について子どもと話すことの有無は表4に示した。「ある」164名(18.9%)、「時々ある」443名(51.0%)、「あまりない」203名(23.4%)「ない」46名(5.3%)であった。話す機会は「テレビニュースなどの事件や話題がきっかけ」411名(67.7%)が最も多く、「身近な人が亡くなったとき」51名(8.4%)、「身近な人が病気になったとき」29名(4.8%)、「ペットが死んだとき」29名(4.8%)、「学校の話題や出来事を通して」21名(3.5%)であった。 設定した項目以外で自由記述にあった話す機会は、「死ねーや死んだとかをふざけて子どもが言うとき」「死ねなどを安易に使っているとき」「子どもたちが死を軽く感じているように思うとき」「法事やお盆のとき」「ドラマで死の場面があったとき」「子どもに聞かれたとき」「絵本、漫画で死の場面があったとき」「ドキュメンタリー番組など難病で生きている人の話題のとき」「自分(親)が病気になって入院、手術をしたとき」「身近な人や家族の人が亡くなったとき」などであった。また、「死があるからこそ命、生の意味を考える機会になる」などの記述もあった。 また、子どもと「死」について話すことに関して「子どもから自分はいつ死ぬの?」「死んだらどうなるの?」「ママは何歳で死ぬの?」「死んだら何を着るの?」「お墓はどうするの?」「死んだら生き返るんでしょ?」など子どもから多くの質問を受けている記述が見られた。これらに対する子どもへの対応について「子どもが納得いくまで話した」という記述と「子どもが死について不安があるので話をごまかしている」というものがあった。また、「子どもに死について話していきたいと考えているが、どのように話してよいかわからない」、または、「迷うためそのままにしてしまう」などの記述がみられた。また、子どもと話をすることが「あまりない」「ない」と回答しているものは28.7%であった。自由記述の中にも、「子どもと一緒に死の問題を今から考える必要はない」、「小学校前には教えなくてよい」などの記述が少数ではあるがみられた。

表4 子どもと「死」について話すことの有無とその機会

子どもが大切な人との死別を経験した場合に、親としてどのように子どもに関わりたいかについては表5に示した。「子どもにわかる範囲で話したい」389名(44.8%)、「子どもと亡くなった人のことを話したい」278名(32.0%)、「子どもの気持ちを知りたいので話したい」118名(13.6%)と話したいとするものが9割を占めていた。

表5 子どもが大切な人と死別を体験したときにどのように関わりたいか



4.子どもと「死」について話すことに関する年代別に対する親の考え

小学生の子どもを持つ親として、幼児期(4~6歳)、小学校低学年(7~9歳)、小学校高学年(10~12歳)の各年代の子どもと「死」について話すことをどのように考えるかについての親の考えは表6に示した。
「子どもと話すことが大事である」が、幼児期では693名(79.8%)、小学校低学年では782名(90.1%)、小学校高学年では727名(83.8%)であり、親のほぼ8割以上は、幼児期から学童期いずれの年代の子どもに対しても子どもと話すことが大事であると回答していた。
自由記述では、いずれの年代に対しても「理解できる範囲で話すことが大事」「話す必要があるときには話す」「話すことも大事であり、体験して初めて考える機会なる」「死の話というより、悲しみの感情に寄り添うこと、感じあうことの気持ちを話す」が共通してみられた内容であった。幼児期では「話すことは大事だが、恐怖とならないように」「話したことがあったが、恐怖を感じていた」など死に対する恐怖という言葉が特徴としてみられた。小学生に対しては、「死や動物をいじめるなどの行動も見られる時期なので積極的に話すことが大事な時期」「命の大切さとして伝えたほうがわかるのでは」「生から死までのサイクルとして話していきたい」などの記述があった。



5.子どもの続柄と子どもと「死」について話すことの関連

子どもとの続柄と子どもと「死」について話すことについては表7に示した。続柄と子どもと「死」について話すことには関連があった。母親は「話をすることがある」19.7%、「時々ある」52.3%で、両者を含めると72%が話をすると回答していた。父親では「話をすることがある」7.5%、「時々ある」45.3%であった。父親では「話をあまりしない」26.4%、「しない」20.8%、母親では「話をあまりしない」23.6%、「しない」4.4%であり、母親に子どもと話すものが多かった。

表6.子どもと「死」について話すことの年代別に対する親の考え

表7 続柄と子どもの「死」について話すことの関連


6.子どもが死別を体験したときの親の関わり

子どもが死別を経験したことがあるとした親363名を対象に、死別した時に子どもとそのことについての話をする機会の有無は表8に示した。「話した」「少しは話した」329名(90.6%)、「あまり話をしなかった」「話をしなかった」29名(8%)であった。話した時期は、「亡くなる前後に話した」182名(55.3%)が最も多く、「亡くなってしばらくたってから」86名(26.1%)、「亡くなる前から」55名(16.7%)であった。話した内容は、「亡くなった人と過ごした想い出や出来事」136名(41.3%)が最も多く、次いで「亡くなった人の病気や死の原因のこと」102名(31.0%)であった。自由記述には、「死んだ後亡くなった人はどこへ行くのか、どうなるのか」「亡くなった人がいつも側で見守ってくれる」などを話したというものがあった。
話をするきっかけや理由は、「子どものわかる範囲で説明することは大事と思ったから」163名(49.5%)、「子どもが質問してきたから」65名(19.8%)が多かった。その他の理由に関する自由記述では、「生きていること、生きていく尊さを感じてほしいと思ったから」「健康な毎日を送っていけることに感謝してほしいと思ったから」「命のつながりについて伝えておきたかったから」「必ず別れがあるから人と接する時間を大切にしてほしい」「病気のつらさ、家族の協力など人の痛みと助け合いを学んで欲しかった」「死を経験して生きる意味を考えるようになったから」といった死を通して命の問題を考える機会になるというものが多かった。その他「隠す必要がないし、教えていこうと思った」「理屈ではなく現実だから」「亡くなった人のことを忘れてほしくない」「大好きな人の思い出がいっぱいあったから」などであった。
話をしなかった理由は、「突然のことで時間的な余裕がなかった」6名(20.7%)、「子どもが理解できる年齢になったら話そうと思った」5名(17.2%)、「子どもに話したかったがどのように話してよいかわからなかった」4名(13.8%)であった。

表8 子どもが死別を体験したときの親の関わり


7.自由記述からみた子どもと「死」について話すことに関する思いや考えとその内容

調査の最後に子どもが死別を体験したときの対応や子どもと「死」について話すことに対して日頃から思うことや考え、その内容などを自由に記述する欄を設けた。その結果541名(62.3%)が自由記述欄にさまざまな思いや考えていることを記述していた。自由記述内容を文脈の意味内容から分析しカテゴリー化した。「子どもの年齢に合わせて伝えることの大切さ」「死を伝えることは、命の大切さを伝えること」「死が軽んじられていることへの危惧、不安」「子どもと気持ちを共有しあうことの大切さ」「死別や死の準備について」「死を伝えることへの不安」「死別や死のことは考えたくない」の7カテゴリーに分類された。カテゴリーと各カテゴリーに含まれる具体的内容の代表的なものは表9に示した。
これらの内容は、子どもの姿を通して感じたこと、親自身の子どもの頃や大人になってからの死別の体験と照らして子どもにはこのように伝えたい、このように生きてほしいなどの親の体験を通して感じていることが記述されていたものが多く内容は多岐にわたっていた。また、自らの子ども時代の体験を記述していた中に小学校低学年の時に親を亡くした経験をもち、きょうだいや残された親が激しく泣いている姿を見て、自分は一緒に泣いてはいけない、しっかりしなければと強く感じたこと、しかし、年齢を重ねて親の死に泣かなかった自分を今でも責める気持ちが続いていることを記述していたものもあった。

表9 子どもと「死」について話すことに関する思いや考えとその内容(自由記述)

記述された主な内容
子どもの年齢に合わせて伝えることの大切さ 「死」が誰にでも訪れることなどを小さいうちから話すこと大事
小さな子でも子どもになりに考えているので小さいから早いということはない
子どもの理解できる範囲で語りかけたい
低年齢でもいのちの大切さをわからせることはできる
幼児期なりの受けとめがある
小さいときから教えていく必要ある
死についても、きちんと話すと子どもなりに理解しているようだ
子どもは大人が思っている以上に理解できる
死は避けるのではなく、理解できる範囲で少しずつ話すこと
子どもだから知らなくていいということはない、早いことはない
死を悲観的に捉え、子どもに話すまいと思うことは間違い
「死」を伝えることは、命の大切さを伝えること 生と死は裏表一体であるから、隠すことなく伝える
「死」だけを取り上げるのではなく、「命」は生から死へとつながっている
死は特別なことでないからこそ、命は大切と伝えたい
死は終わりでなく、心の中にいき続ける
命には限りがある、死は避けられない、だからこそ命が大切
死を話すことはどうやって生きていくかを話すこと
先に死んだ人の生き様を考えて欲しい、自分の生き方を考えて欲しい
命の尊さを知るために死について話すべき
死に出会うことは、人間としての成長する契機といえる
生と死の両方から話す
死が軽んじられていることへの危惧・不安 死を軽い気持ちで考える子どもになって欲しくない
今の子どもは死をなんとも思っていないようだ
テレビ、ドラで死が氾濫し死の感覚が麻痺しているのでは、
軽く扱われているのでは
ネットなどで血だらけの映像などが簡単に出る時代だからこそ
死について考えること大事
テレビ、ゲームで死の重みが感じられない、死の意味を考えて欲しい
死んでもまた、生き返ってこれると簡単に思っているようで気になる
「死んでも生き返る」と思っている子どもたちが多いのに驚いた
死ね、殺すをよく言うのが気になる
子どもと気持ちを共有しあうことの大切さ 子どもと向き合い考えていきたい
亡くなった人の想い出などを子どもと話す時間を持っている
一緒に体験した時は、一緒に語り合えたらと思っている
子どもの思いや気持ちには向き合いたい
子どもの思いを聞き、いろいろ話しあいたい
死別や死の準備について 親がいなくなったときに乗り越えられる力をつけて欲しいので、
いろいろ親子で話している
死は、いつ起こるかわからないことを話している
死別を乗り越える強い生命力を持って生き抜くことを話している
死の準備教育という考え方に出会い、死の問題を考えるようになった
死を伝えることへの不安 親自身がそのときは動揺して、伝えられないかもしれない
子どもが死に出会ったときに、どう伝えてよいのか正直不安
うまく伝えられないのではと心配
身近な人の死が近い将来あるので、いつどのように話すか悩んでいる
死別や死のことは考えたくない 死別したくないので、それは考えない
死別のことは考えたくない、今から悩んでも仕方ない
今はまだ考えていない
小学校入学前の子どもにはあえて死を教えることはない

Ⅴ.考察

1.子どもと「死」ついて話すことについての親の意識

親がとらえている「死」に関連する子どもの体験では、ペットとの死別はほぼ半数、通夜、葬式の出席、病気の人のお見舞いなどは8割以上、死別の体験は4割が体験をしていた。これらの結果は、以前に岡田ら10)や上薗11)の子どもを対象とした調査でも同様の結果であった。親は、日頃から子どもと「死」について話す機会があると7割の親が回答し、子どもが大切な人と死別した場合でも9割の親がその前後に子どもと話す機会があったと回答していた。また、子どもと「死」について話すことはいずれの年代(幼児期~学童期)に対しても8割以上の親が大事であると回答していた。これらの結果より親の多くは、子どもと「死」について話しをすることには関心が高く、死の問題は生、命の問題であると自由記述の中でも述べており、命の大切さ、生きることの意味を日頃から伝えている、または伝えたいという考えがあることが明らかとなった。 村井12 )は、子どもを取り巻く大人は「死」は知の対象ではなく、死について考えても仕方がないと考えていること、大人自身が死に対する恐怖があり死をタブー視する傾向があると指摘する。しかし、今回の結果では、小学生の子どもを持つ親は、子どもと「死」について話すことをタブー視しているとは言えず、多くは機会があれば話している様子があった。特に話題のきっかけは、「テレビニュースなどの事件や話題がきっかけ」とするものが約7割近くを占めていた。また、どのような時に子どもと「死」について話すかについての自由記述欄などには、「ドラマで死の場面が流れたとき」「子どもたちが死を軽く感じているように思うとき」「死ねなどを安易に使っているとき」などの場面をあげており、親として子どもに命の大切さや「死」の意味を考えて欲しい、伝えたいという思いが見られた。 これは、「誰でもいいから殺したかった」などという理由で起きる殺人事件や子どもが被害者や加害者になる事件などが起きている社会的な背景などから親が死や命の問題について日頃から子どもと考える機会をもつことが大事なときであると考えていることの現れとも考えられる。 また、子どもが大切な人と死別を体験した経験を持つ親が、そのことについて何らかの時期に子どもと話したと回答しているものが9割いた。亡くなった人と過ごした想い出や出来事、病気や死のこと、子どもからの「死んだ後どうなるか」などの質問に答える形で話している。また、子どもにわかる範囲で説明することは大事と思ったなどが話をする理由として多く、身近な人が亡くなるという場の中でも子どもと話していることが明らかとなり、親は機会があれば子どもと多くの場面で向き合っているといえる。 子どもの続柄と「死」について話すことには関連があり、母親は子どもと話す機会があり、父親が少ない傾向があった。これは、母親が子どもと過ごす時間が長く、会話時間が多いことによるものか、母親と父親との会話に対する意識の違いなのかについては検討が必要である。 前述したように、いずれの年代に対しても親の多くが子どもと「死」について話すことが大切であると考えていた。しかし、今回の調査では、対象者自身の子どもの年齢と年代別に対する回答との関連については、質問の方法に不足がありその点については十分検討ができなかった。今後、そのそれぞれの年代の子どもをもつ親が、そのことをどのようなに考える傾向があるのかは検討が必要なところである。  今回の調査では、親は子どもと「死」について話すことについては比較的高い関心を持っていた。しかし、子どもからのさまざまな質問に対して「子どもが納得いくまで話した」という記述がある一方、「子どもが死について不安があるので話をごまかしている」というものがあった。また、子どもと話をすることがあまりないと回答しているものも3割程度おり、「子どもと一緒に死の問題を今から考える必要はない」、「小学校前には教えなくてよい」などの回答も少数ではあるが見られた。また、子どもが死別を体験した場面などでは、あまり話をしなかった、話をしなかったものは、1割弱いた。その理由は、「突然のことで時間的な余裕がなかった」というものがあり、これは親自身もパニックとなる場面であることにより話ができなかったことは予測されるが、「子どもにどのように話してよいかわからなかった」というものが少数ながらいた。これは、親が子どもにどのように話してよいのかわからないといった迷い、または、年齢によっては話す必要がないなどの理由で話を避ける場合も少なくないといえる。 以前に岡田ら13 )や上薗14 )が子どもを対象に実施した調査では、ペットとの死別や葬式、死の話題などを親と話したことがあると答えている子どもは1~4割前後という結果であった。対象者の特性や調査方法、内容なども考慮すれば単純な比較はできないが、今回の親の意識と子どもの反応に差があることが伺われる。この違いは、先にも述べた社会背景の変化に伴い親の関心が高くなっているのか、または、回収率等から推察して回答を寄せた親の関心が、比較的高い集団であるためなのかは判断しがたい。 しかし、子どもの立場から考えれば、今回の結果の中から見える親の迷いや戸惑いから子どもと話すことを躊躇することが、子どもにとっては十分に疑問や気持ちを親と共有できないと感じることにつながる可能性もある。近藤15)は、いのちの教育の骨格を形作るプロセスは、「いのちの体験」を子ども自身が正面からとらえること、そのとき誰かとその体験を「共有」すること、その中で根源的な問題に答えを出さずに棚上げする段階も見守り待つことであると述べている。結果で示した自由記述のエピソードに親自身が、小学校低学年のときの死別の体験として気持ちの表現ができずに苦しかった体験を述べていたものがあった。これは、子どもが「死」という出来事に直面したときに、子どもの置かれた状況を理解し、側にいる人のあり方を考える上では子どもと死についてどのような場面で、どのように関わるのかを考える上では多くの示唆を含むものである。


2.親と子どもが「死」について共に考えるということ

今回の調査では、多くの親が子どもと「死」ついて話すことに関心を持ち、関わろうとしている様子が確認できた。しかし、前述したように少数ながらも「今から考えなくてもよいのでは」「あまり考えることはない」というものや「話したいがどのように話したらよいのかわからない」、また自殺などの場合は、さらに子どもへの伝え方に戸惑いが見られる記述もあった。このように親が子どもと「死」についてどのように話してよいかわからない、または、必要がないという親の思いや考えに目を向け、子どもと「死」について話すことの意味を考える機会が必要になっているのではないだろうか。つまり、子どもの発達や死の理解の段階にあわせて、「いのち」「死」について子どもと親が一緒に考えられる場が、家庭以外でも学校や社会といった場の中でも取り組まれる必要性を感じた。 最近は、学校教育の中でも「いのち」の授業などで積極的に「生・死」の問題を扱っているところも増えてきている。赤澤ら16)17)の養護教諭や一般成人を対象とした調査でも、子どもへの「死」の準備教育の必要性を7割以上感じていることを報告しており、社会の関心が高まってきていることが推察される。教育現場などで子どもと親が一緒に「いのち」の授業に参加しその後一緒に話し合う場など、子どもと親が同じ問題や話題を共有することで子どもの反応や考えることを親も知る機会になる。子どもであっても、生活の中で災害や事故などに遭遇し大切な人を失うという経験は決して少なくない。親と子どもが「生」「死」についてともに考えることの意義を社会的な課題として取り組んでいくことが問われている。

Ⅵ.結論

小学生をもつ親の多くは、子どもと「死」に関する話題を持つことに関心がある。しかし、少数ではあるが、子どもと話すことはほとんどない、または、あまり必要と感じていないと考える親もいた。子どもを取り巻く学校現場や医療現場など社会全体で、子どもと「死」「生」の問題を一緒に共有していくことが大切である。

Ⅶ.おわりに

今回の調査は、北海道という一地域を対象とした調査であること、回収率から考えても回答者が子どもと「死」について話すことへの意識の高い集団であることなどが考えられた。そのため、小学生の子どもを持つ親全体に一般化することには限界があるが、小学生の子どもを持つ親が考える「死」について子どもと話すことへの意識や関わりについては多くの示唆を得ることができた。  また、本報告では親が、子どもと「死」について話すことをキーワードにどのように関わっているのかの実態を明らかにした。今後はさらに子ども自身が死別の体験をもつ親に焦点を絞り、親と子どもの関わり、親自身の子ども時代の死別の体験と子どもへの関わりとの関連などからさらに分析を加え、死別経験をもつ子どもを取り巻く状況を第2報として報告する予定である。

本研究にあたり調査にご協力頂きました保護者の皆様、また調査実施に際してご協力頂きました小学校の教職員の皆様及び関係機関の皆様に心より感謝申し上げます。

本研究は、2007~2009年度科学研究費補助金基盤研究C(2)(研究代表者茎津智子)の助成を受けて実施している研究の一部である。なお、本論文は第55回日本小児保健学会(2008.10)にて口演発表したものに加筆検討を加えたものである。

引用文献
1)小島ひで子:子ども時代の親との死別後の悲嘆とソーシャルサポート,臨床死生学,9,14-24,2004
2)小島ひで子:親を喪失することへの子どもの予期悲嘆とグリーフケア,臨床死生学,12,9-19,2007.
3)小島ひで子:親をなくした子どもの死別ケア-子どもたちが求めていることは,死の臨床,
31:2,211,2008.
4)伊藤理砂他:残される小さな子どもに対する配慮,ホスピスと在宅ケア12(3),219-222,2004.
5)大塚千秋,安藤満代,ターミナル期のケア―子どもに母親の死を教える,群馬保健学紀要,23,33-42,2002.
6)Grollman,E.A. 重兼裕子訳:死ぬってどういうこと?子どもに死を語るとき,春秋社,1992.
7)Worden, J.W. : Children and Grief , When a parent dies, the Guilford Press, 1996.
8)Silverman,P.R. : Never Too Young to Know, Oxford University Press,2000.
9)村井淳:Ⅲいのちの授業をつくる,性の授業 死の授業,金森俊明・村井淳志, 198-199,教育史料出版会,1996.
10)岡田洋子他:子どもの「アニミズム・死の概念発達」と生活体験―Death Education の方略を求めて―,平成10~12年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書,2001.
11) 上薗恒太郎:子どもの死の意識と経験,長崎大学教育学部教育科学研究報告,51、15-25,1996.
12)前掲9)
13)前掲10)
14) 前掲 11)
15)近藤卓:いのちの教育-学校・家庭における展開-,思春期学,21(1),65-69,2003.
16)赤澤正人他:一般成人を対象としたデス・エデュケーションに関する意識調査―学校現場で生と死を教えることについて―,ホスピスと在宅ケア,13:1,23-27,2005.
17)赤澤正人他:養護教諭を対象としたデス・エデュケーションに関する意識調査―学校現場で生と死を教えることについて―,ホスピスと在宅ケア,38:3,195-200,2006.

(天使大学紀要第9巻、81~99、2009掲載)

小学生をもつ親が子どもと「死を語る」ことに関する意識と実態

茎津智子、工藤悦子、小林千代(天使大学)、
井上由紀子(日本赤十字北海道看護大学)、
岡田洋子(旭川医科大学)

【はじめに】

子どもであっても生活の中ではさまざまな「生」「死」の問題に直面することは少なくない。子どもと親が、これらの問題をどのように共有しているのかを明らかにすることを目的に子どもをもつ親が、子どもと「死を語る」ことの実態を調査した。

【対象・方法】

対象は小学1~6年の子どもをもつ保護者868名。2007年12月~2008年2月に小学校の協力で無記名自記式質問紙の配布、郵送により回収した(回収率22%)。調査内容は、子どものペットとの死別、お見舞いなどの体験、親しい人との死別体験および親が子どもと「死」について語ることの実態、意識である。単純集計により結果を分析した。本調査は天使大学倫理委員会の承認を得ている。

【結果・考察】

対象の属性は、母親93%、父親6%、年代別では、30代、40代が最も多く80%を占めた。子どもの数は、1人23%、2人52%、3人21%、4人以上3%、子どもの平均年齢は、10.4歳であった。家族構成は、両親と子ども71%、父親または母親と子ども11%、その他18%であった。
子どもの体験は、ペットとの死別約50%、通夜・葬式への出席、病気のお見舞いなどの体験は85%以上、死別体験は42%があり、死別相手は祖父母が71%、父または母との死別4%であった。死別体験の子どもをもつ親の91%は、死別の時期に子どもと死について話している。親全体でも子どもが誰かと死別した時は45%が、子どもにわかる範囲で話したいとしている。普段子どもと「死」について話すことがあると約70%があると答え、きっかけはニュースの事件、話題68%が最も多い。約30%は子どもと話す機会がないと答えている。子どもの幼児期、学童期前期、後期の年齢別で子どもと「死を語る」ことについては、いずれの年代でも80%以上が大事であると答えている。
今回の調査では子どもをもつ親の多くは、子どもと「死を語る」ことに関しての意識は比較的高く、機会があれば子どもと「死」の問題を話していた。今回の調査では自由記載にも多くの感想、意見が寄せられ関心が高い集団であると思われるが、一方30%の親はほとんど話すことがないと答え、親と子どもが「生・死」の問題を一緒に考える意味を社会全体でも考えていく必要性を考えさせられた。

(第55回日本小児保健学会にて発表、2008年9月25日~27日、札幌)

身近な人と死別した子どもをもつ親が子どもと「死を語る」ことの意識と実態

井上由紀子(日本赤十字北海道看護大学)、
茎津智子、工藤悦子、小林千代(天使大学)、
岡田洋子(旭川医科大学)

【はじめに】

子どもにとって身近な人との死別は、子どもに喪失、悲嘆の経験となる。その時に子どもの最も身近にいる親が、これらの問題を子どもとどのように共有しているか、また関わっているのかを明らかにすることを目的に実態を調査した。

【対象・方法】

2007年12月~2008年2月に小学校の協力で小学校1~6年生までの保護者に無記名自記式質問紙を配布、郵送により回収した。子どもに死別体験があると答えた親363名を対象に、子どもが身近な人と死別した時の対応、子どもと「死」について語ることの意識、実態を単純集計により分析した。本調査は、天使大学倫理委員会の承認を得ている。

【結果・考察】

対象の属性は、母親94%、父親5%、年代別では、40代、30代が80%を占めた。死別した相手は祖父母が70%と最も多く、友だち7%、父親4%、死亡原因は、病気89%、事故10%、自殺3%であった。
死別体験のある子どもの親が、死別の時期に子どもと死について「話した」ものは91%を示し、亡くなる前後に話したが55%、死後しばらくしてが26%、亡くなる前が17%であった。話した内容は死別した人との想い出が最も多く41%、死の原因などが31%であった。子どもと話した主な理由は、子どもにわかる範囲で話すことが大事だと思ったが50%、子どもから質問してきたが20%であった。子どもと話さなかったは8%で、その理由は突然で時間の余裕がなかったが最も多く21%、どう話してよいかわからなかったが14%であった。死別前後の子どもの反応で印象に残っていることは、寂しそうだったが39%、泣いていたが20%であった。今後子どもが大切な人と死別した際は、子どもにわかる範囲で話したいが47%、子どもと亡くなった人のことを話したいが34%であった。普段子どもと「死」について話すことがあると70%以上が回答していた。
死別体験のある子どもをもつ親は、自由記載内容からも子どもと亡くなった人との想い出等を語ることで子どもへ「生と死」を伝えたい、今後も子どもと話し合いたいと「死を語る」ことへの意識の高さがうかがえた。反面少数ではあるが、話せなかったと子どもへの対応に戸惑った回答もあった。今後はこれらの体験について子どもの反応を含めた検討が課題である。

(第55回日本小児保健学会にて発表、2008年9月25日~27日、札幌)

小学生の子どもを持つ親の生・死の問題に対する意識

小林千代、茎津智子(天使大学)、工藤悦子(北海道医療大学大学院博士前期課程)、井上由紀子(日本赤十字北海道看護大学)、岩本喜久子(札幌医科大学)
岡田洋子(旭川医科大学)

目的:

現代社会は、子どもを取り巻く生や死に関する出来事や環境は複雑になってきている。そこで、親の立場から日頃子どもを取り巻く生や死の問題、子どもとこれらの問題を語ることなど親として意識していること、感じていることを明らかにする。

対象・方法:

小学生の子どもを持つ親でインタビューの協力が得られた29名を対象にグループ・インタビュー実施した。分析は、語られた内容を逐語録として起こし、意味内容を抽象概念化しカテゴリーを抽出した。倫理的配慮として対象者に研究の主旨、目的、方法、任意参加の保証、不参加による不利益が生じないことなどを文書により説明を行い、研究代表者の所属大学倫理委員会の承認を得て行った。2008年9月~2009年3月に実施。

結果・考察:

本報告では、子ども自身には死別体験がない親10名のインタビュー結果を報告する。対象者は母親9名、父親1名、30~50代の親であった。 語られた内容から6カテゴリーを抽出した。
1.子どもを取り巻く環境への不安や心配:子どもたちが生や死を軽んずるような言葉やそのような出来事が氾濫するメディア、ネットやゲームに子どもがさらされていることなど、子どもの環境への不安や心配を表現していた。
2.子どもの態度・反応に対する信頼と危惧:子どもが「死ね」「殺す」などの言葉を軽く使うことへの危惧と同時に、出来事を通して生の問題と向き合うわが子への信頼を寄せる思いを表現していた。
3.親の子どもへの関わり方に対する迷い、手探り:親が大切なことを伝えたいと思う一方、親の価値を押し付けているだけではないか、もっとはっきり言うほうがよかったのではという親としての関わり方に対する迷いや悩む思いを表現していた。
4.学校・社会への不満と期待:学校の生や死の問題への取り組みに対して、親と学校や親同士の連携のなさ、それらを扱う教師の子どもへの関わり方に対する不満、一方では学校や教師以外の専門職に対するこれらの問題への取り組みなどの期待を表現していた。
5.子どもに伝えたい思い・考え・価値:親の子どもに伝えたい価値や向き合う様子を表現していた。
6.親を取り巻く環境への戸惑い:親自身が生きてきた背景と現代の環境との違いや変化の中で、子どもと生や死についての向き合い方への戸惑い、迷いの思いを表現していた。  以上、子どもにとって好ましいとばかりいえない環境の中で、また、親自身も社会の影響を受けながら子どもに伝えるべきことを模索し向き合う親の姿が明らかになった。

(第15回日本臨床死生学会大会にて発表、2009年12月5日~6日、東京)

死別体験のある子どもを持つ親の生・死の問題に対する意識

井上由紀子(日本赤十字北海道看護大学)、岩本喜久子(札幌医科大学)、
岡田洋子(旭川医科大学)、小林千代、 茎津智子(天使大学)
工藤悦子(北海道医療大学大学院博士前期課程)

目的:

現代社会においては、子どもも多くの生や死の問題に出会うことは少なくない。我々の調査では、3割の親たちが子どもと生や死に関する話題をもつことがほとんどないという状況があった。そこで、親の立場から子どもとこれらの問題を語ることなど親として意識していること、感じていることを明らかにした。本報告では、死別体験がある子どもを持つ親を対象にした結果について報告する。

対象・方法:

子どもに死別体験がある親でインタビュー協力が得られた者19名を対象にグループインタビューを実施した。分析は、質的分析法により語られた内容を逐語録として起こし、意味内容を抽象概念化する作業を行った。倫理的配慮としては、対象者に主旨、目的、方法、任意参加であること、協力を断ることによる不利益が生じないことなどを文書により説明を行い、研究代表者の所属大学倫理委員会の承認を得て行った。2008年9月~2009年3月に実施。

結果・考察:

対象者は、母親15名、父親4名で、6~12歳代の死別体験のある子どもを持つ親である。親から見た死別体験した子どもの状況、子どもとの関係や思い、生や死をめぐる子どもを取り巻く環境などの視点から語られた。その結果、親は死別体験した子どもに対して、「ショックが大きかったようだ」「冷静に受けとめていた」「淡々としていた」という印象を語った。一方で、子どもが仏壇に語る姿、供え物をする行為を目にし、死者をいたわること、子どもなりに死後の世界を抱いていることを感じていた。また、いじめられている子どもや自分と同じように死別体験をした友人に対する思いやりをもち、「死ねっていう言葉はすごく悲しい」など、死別体験により子どもが死や命に対する理解を高めていること、死別体験後、子どもの行動や思いに変化があることを語った。さらに、親自らが子どもと同様大切な人を亡くした当事者であるため、自分が喪失による悲しみや余裕のなさから子どもの思いに気づけなかった申し訳なさを語った。また、自分の喪失体験と子どもの示す反応と比較していることもあった。親は子どもが死別体験によって表現する様々な行動や思いを、日々の生活の中で共有し生や死について語りあうことの大切さを強く感じていた。一方で、子どもの現実にはゲームというバーチャルな世界が存在し、それらの世界では死が作為的に引き起こせることから、子どもへの影響を危惧していた。同時に、同じ年代の子どもをもつ親には死別体験が少ないことから、親同士で子どもに生や死を伝えることを語りあうことの難しさを実感していた。
この調査を通し、死別体験をした子どもをもつ親は、子どもと死について話す機会を持つことの大切さを感じ、死別体験の有無が子どもの生や命の捉え方に大きく影響していることを実感していた。一方、メディアから入る情報に子どもたちがどのように影響を受けるか、自分の意図することが伝わっているのだろうかなど子どもと死について向き合って話をすることの難しさも強く認識していた。

(第15回日本臨床死生学会大会にて発表、2009年12月5日~6日、東京)